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美味しんぼに対する風評被害

 
・私と美味しんぼ
中学時代に、アニメがきっかけでファンになった。
初めて買った単行本は34巻だったと思う。スピリッツも読むようになった。
大学時代に金に困って、新刊で揃えていた五十冊超の単行本を古本屋に売ってしまった。
後にブックオフで買い戻したが、やはり後悔している。
現在110巻まで全て揃えているが、ここ数年は、ただ買うだけであまり読んでいない。
スピリッツも十五年ぐらい読んでいない。
 
 
何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか: 不倒城
 
はてブのホットエントリだが、ここで語られている内容には同意できない。
ブログ主のしんざき氏は、実は美味しんぼをろくに読んでいなくて、
ネットで聞きかじった情報をもとに語っていると思う。
 
 
・しんざき氏の作品解説の引用その1

かつての美味しんぼには、読者にカタルシスを提供する仕組みがきちんと用意されていました。
 
・山岡の、組織に対する反骨精神とそれによるヒーロー性
・圧倒的な敵役としての海原雄山と、その横暴さによるストレス
・それに対して、山岡が海原雄山に一矢を報いることの出来るカタルシス
・それ以外にも、食通ぶって知識をひけらかしている嫌味なキャラを山岡がへこませるカタルシス
・トラブルメーカー、コミカル枠として色々ドジをやる富井の存在
東西新聞社の人間関係と絡んだ、栗田とのラブコメ要素

 
一見して頂けば分かると思うんですが、これらの要素、現在の美味しんぼではほぼ全滅です。
せいぜい富井くらいしか残っていません(最近頻度低いけど)。吾らの唯一の希望、富井。頑張れ富井。

 
挙げられている数々の仕組みが、面白さを生んでいるとは思わない。
そんな表層の設定よりも、各話単位での脚本の巧さや、山岡さんや雄山が
物事の本質を鋭く言い当てたときの知的刺激こそが、面白さを生むんだよ。
代表的なものとして、31巻の鍋対決で究極と至高の勝敗を分けた経緯と理由は、
鋭いところをついていて面白かった。
 
そして肝心なことだが、美味しんぼの価値の中心はやはり料理なのだ。
実際、「美味しそう!」「食べたい!」と思わせる料理が作中にたくさん出てくる。
たとえば20巻の塩蒸しアワビ、24巻の至高のポークカレー、31巻の至高の五大鍋、
どれもすごく美味しそうで、わくわくした。食べてみたいと思った。
つまらなくなって久しい近作でも、91巻の上火の焼き鳥や、
93巻のマグロの寿司なんかは食べてみたいと思った。
(ネットの時代になって、「美味しんぼは料理の絵が美味しそうに見えない」という
指摘を見るようになった。言われてみれば、たしかにそうかもしれない)
 
一つずつ反論しよう。
 

・山岡の、組織に対する反骨精神とそれによるヒーロー性

権威に盲従しない主体性や実力は山岡さんの魅力だが、
「組織に対する反骨精神」と言うのは何を指して言っているのだろうか。
 

・圧倒的な敵役としての海原雄山と、その横暴さによるストレス

雄山は初期のころから、根は人格者である面を見せている。
だから雄山の傲慢な振る舞いに、読者がストレスを感じることは少ないと思う。
 

・それに対して、山岡が海原雄山に一矢を報いることの出来るカタルシス

究極側が負けることのほうが多いから、勝った時にそれなりの爽快感があるのは確か。
でもお互い権威権力を嫌う人格者同士の戦いだし、実力もわりと拮抗しているわけで、
山岡さんが雄山に勝ったからといって、一矢報いたというほどの感慨は無い。
勝負の面白さを決めるのは、勝敗ではなく、料理や理屈の内容だしね。
 

・それ以外にも、食通ぶって知識をひけらかしている嫌味なキャラを山岡がへこませるカタルシス

特徴として挙げられるほど実例があるかなあ……。
山岡さんに一本取られた人は、改心して善人に転じることが多いので、
嫌味なキャラがへこまされる快感というのは案外少ないよ。
 

・トラブルメーカー、コミカル枠として色々ドジをやる富井の存在

トミーはたしかに面白いが、トミーを過剰に面白がる人はニワカ臭い。
 

東西新聞社の人間関係と絡んだ、栗田とのラブコメ要素

20巻代から、若者たちの群像劇になって楽しくなったと思う。
ただトミーもラブコメも、それ自体は作品のカタルシスとは関係が無いはず。
 
 
・しんざき氏の作品解説の引用その2

本来、漫画としては、美味しんぼって「アウトローヒーローもの」に近かったと思うんですよ。
アウトローヒーローとしての山岡が、既存の権威に真っ向反抗して、料理を題材に色んなものをぶった切る。
読者はそれでカタルシスを得る。
 
ギャラリーフェイクなんかと同じく、ブラックジャックを意識した部分もあったんじゃないかと推測します。
料理に関するうんちくはその背景というか、小道具に過ぎなかった。
で、上に列挙してあるだけの「面白い」要素が詰め込まれていた。
 
これらの要素がスポイルされてしまった原因は、今更言うまでもなく三つに大別されます。
 
海原雄山が人格者化してしまって大ボスがいなくなってしまった
・雄山と関連して、山岡も丸くなってしまった
・栗田との人間関係も片付いてしまった

 
これに対して、残った要素が料理についての偏った視点に基づくうんちくだけなんだから、
そりゃ漫画として面白くなる訳がありません。なんか飯くってごちゃごちゃいってるだけの漫画です。

 
料理に関するうんちくが、背景や小道具ですむわけがない。
食べ物を通して人や社会の真実を語るのが美味しんぼのメインテーマだよ。
読者は料理のうんちくを通じて、色々な物の見方や考え方を学ぶことができる。
環境問題や食品の安全性など、社会的な問題提起もある。
その知的刺激が美味しんぼの大きな売りになっている。
 

海原雄山が人格者化してしまって大ボスがいなくなってしまった

雄山は初期の頃から人格者だったし、大ボスがいないことが、
なぜ面白さを損ねる理由になるのかわからない。
 
大物で魅力的な敵なら、雄山以外にもいたよ。
たとえば38巻ラーメン戦争に出てきた流星一番亭の雉川。
横暴な乗っ取り屋である一方、強靭な信念や哲学を持ってラーメンに打ち込んでいる
人物であり、彼が初めて登場した回はわくわくした。話も良くできていた。
黒いマスコミ王・金上も、早々と道化になりフェードアウトしてしまったが、
岡星のじゅん菜料理の件では相当な実力を見せた。悪の格好良さがあった。
雁屋が心を入れ替えて頑張れば、再びこうした敵キャラを作り出せるかもしれない。
 

・雄山と関連して、山岡も丸くなってしまった
・栗田との人間関係も片付いてしまった

 
曖昧な意見。詳しい説明が欲しい。
 
 
 
・最後に
 
はてなブックマーク - 何故みんな、今回の美味しんぼが面白かったか面白くなかったかの話をしないのか: 不倒城
 
読んでない人が記事を書き、読んでない人が面白がって、誤った作品評を広めてしまう。
これでは美味しんぼのことをとやかく言えないだろう。