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くだらない惹句問題

 



いやいや、中森さん、まる天はびっくり箱じゃないんですよ……。
ラストの真相は誰もが察しがつく程度のもので、それは決して本作の売りではない。
女流サスペンス作家ミラーが描く“華やかなハードボイルド”とでも呼ぶべき本作は、
陳腐な言葉で言うと、いわゆる雰囲気もの。宗教集団のどこか滑稽さも含んだ神秘性と、
寂れた町で泥臭く生きる人々が織りなす、奇妙で熱っぽい空気こそが本作の核心だと思う。
作中の謎は、あくまで物語にテンションを出すためのものにすぎない。
 
まる天はすごく好きな作品で、私は何よりその空気の豊かさに惹かれたから、
本作が安いびっくり箱に堕ちなくて良かったと思っているぐらいだ。
 
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“最後の一撃”という表現がこれほどまでにふさわしい終幕は他にない―――

心臓を貫く驚愕の結末

この件はもちろん、これらの下手な惹句を書いたコピーライターが悪い。
中森氏のように、惹句に釣られてミステリ頭で本作を読んでしまった人にとっては、
物足りなく思われてしまうのも無理はない。表紙もなんだか安っぽくて好きじゃない。
 
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こちらは83年刊ハヤカワ版の文庫本の表紙。砂漠に立つ修道士。顔は見えない。
そして、ローブの中に映し出されたチコーティの町。巧い。素晴らしい。
 

コピーの劣化

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行間から漂う「品格」。ミステリの女王に酔う。

圧倒的なリーダビリティ

 
最近のハロプロの看板広告を思い出す。コピーが劣化している。
強い言葉や美しい言葉を使いさえすれば本気、誠実だと思っている浅はかさ。
「品格」の強調はかえって下品だし、地味で複雑な『樽』にリーダビリティは無い。
 
とにかく、もう少しちゃんとやろうよ。
作品の本質を捉え損ねた惹句では、かえって海外ミステリ離れを招くだけだ。