LAMB ラム


 
この映画はポーカーみたいだ。
見世物小屋のようなふざけた設定を厚かましく用いる一方で、
アイスランドの霧深い田舎を背景に利用しながら、台詞を減らし、羊たちを神妙に撮り、
宗教や神話との関連を匂わせ、女優がヌードになる等、奥深い映画の雰囲気を漂わせている。
この二面性を以って、この映画が果たして本物なのか、それともブラフなのかの
二択クイズを観客に仕掛けるのが作り手の狙いではないだろうか。
 
その上で、私はこの映画をブラフだと判断する。
その最も強い根拠は、大人の羊人間が出てくる場面。
びっくり箱のような登場のさせ方ゆえ、煽情的で軽薄に見える。
もし本作が真面目な主張を持った映画なら、こんな安易な見せ方はしないんじゃないか。
他にも、夫婦にかつて子供がいたらしいことの匂わせ方をはじめ、
思わせぶりな場面の多くは、どれも陳腐な演出で表現されていたと思う。
色んな場面でブラフの種明かしをしているわけだ。
 
もしこの映画がブラフだった場合、この映画を本物と認めて熱心な考察文を書いた
レビュアーは道化になってしまう。こんな狡賢い罠もなかなか無いよね。
 
 
※このレビュー内の「本物」と「ブラフ」の意味
本物:真面目な主張や高尚な意図を持った映画
ブラフ:本物らしく装って観客を騙すジョーク映画